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Vol. 176. 医療系翻訳タイムズ(連想式医薬英単語1)
-成人記憶能力にとっての敵と味方-

マスメディアの健康情報で、よく目にする記事に、
「内臓脂肪を減らそう」という呼びかけがあります。
内臓脂肪は、健康にとって良くないものであることは確かですが、
内臓脂肪と女性ホルモンの代表格エストラジオールと認知機能、
3者が関連し合っている、という興味深い説があります。

典拠は、“Association of Estradiol and Visceral Fat
With Structural Brain Networks and Memory Performance in Adults”
[JAMA Network Open 2019 Jun 5;2(6)]
です。

2011年8月1日から2014年11月23日までに、
ライプチヒ文明研究センターの健康研究である
Health Study of the Leipzig Research Centre for Civilization Diseases
に参加した、認知症ではない974人を分析対象にした横断的研究です。

“Cross-sectional study of data from 974 cognitively healthy adults
in Germany who participated in the Health Study of the
Leipzig Research Centre for Civilization Diseases, a previously
described population-based cohort study.
The study was conducted from August 1, 2011, to November 23, 2014.”
[Cited from: JAMA Network Open 2019 Jun 5;2(6)、
以降、本稿の英文は、すべて同様のジャーナルから抜粋]


では、内臓脂肪とエストラジオールと認知機能の3者は、
どのように関連し合っているのでしょう。

ちなみに、
「エストラジオール」とは、脊椎(せきつい)動物の雌の卵巣から分泌される
ステロイドホルモンで、女性ホルモン(エストロゲン、卵胞ホルモン)の
代表的なものです。

また、「内臓脂肪」ですが、
食事などから摂取した栄養である糖や脂質が、体内で消費できなくて
余ってしまうと、それらは脂肪となって蓄積されます。
そのうち、おなかを中心とした内臓のまわりについた脂肪が内臓脂肪です。
内臓脂肪は、お腹の中にある腸間膜という腸を固定する膜に蓄積します。
そのため、内臓脂肪が過剰に蓄積すると、お腹がぽっこりと出っ張った
肥満体型になります。


この横断的研究の方法として、
参加者は、空腹時血清のエストラジオール値を測定され、
腹部MRIのT1強調画像に基づいて内臓脂肪体積を測定されました。

“Serum estradiol levels from fasting blood and visceral adipose tissue
volume from T1-weighted magnetic resonance imaging (MRI)”

著者らは、内臓脂肪は、加齢と脳内ネットワーク構造および
認知機能の間にある負の関係性を強める。
しかし、エストラジオールは、(特に女性における)
この負の関係性を、減じると仮定した。

“ (...)we hypothesized that VAT would be associated with
an amplification of the negative association of age with brain
network structure and cognitive health
and that estradiol would be associated with a reduction in the negative
association of VAT with structural network covariance and
cognitive performance in women.”


これらの仮定の後に、以下の結果が導き出された。

1.内臓脂肪は、男女ともに、加齢と記憶に関係する脳内ネットワークの間に
存在する負の関係の悪化に関係していた。

“Visceral adipose tissue (VAT) was associated with an exacerbation
of the negative association of aging with network covariance
for women and men.”

2.エストラジオール値は、女性では、内臓脂肪と脳内ネットワークの間の
負の関係の軽減に関連していた。
男性では有意な関連は見られなかった。
35-55歳の周閉経期の女性を対象にサブグループ解析を行ったところ、
この年代の女性では、エストラジオール低値が、
記憶に関係する脳内ネットワーク構造の不良に関連しており、
記憶能力が低いことにも関連していた。

“Estradiol level was associated with a reduction in the negative association of VAT
with negative covariance in women.
With no significant association in men.
In the female middle subgroup (age range, 35-55 years, when menopause
transition occurs), low estradiol levels were associated with
lower memory network covariance and worse memory performance.”


3.女性の場合、内臓脂肪の悪影響を、血中エストラジオールが
軽減する可能性を示した。

“Estradiol may mitigate the negative association of
visceral fat (…).”

4.内臓脂肪(の増加)は、全身性の炎症に関係して、
脳の構造的完全性を損なうが、しかし、エストラジオールは
その抗炎症作用で、保護的役割を果たし、
(内臓脂肪による悪影響を和らげる)可能性がある。

“If VAT compromises brain structural integrity owing to
its association with systemic inflammation,
estradiol may have a protective role due to
its anti-inflammatory properties(…).”

5.内臓脂肪とエストラジオールは、健康的な脳を保ち続けながらの加齢
に対し、反対の役割を果たしているように見えるが、それらが
どのようにして、相互的に、脳内ネットワーク構造を変えるか
については、不明である。

“Although VAT and estradiol appear to have opposing roles
in association with healthy brain aging, it remains unclear
how they interactively alter brain network structure.”

上記の結果から、著者らは、内臓脂肪とエストラジオールが加齢に伴う
認知機能の変化に関連がある、と結論づけており、
特に、エストラジオールは、中年期の女性の認知機能の低下を遅らせる
不可欠な要素としている。

“Assessing visceral adipose tissue and hormone profiles,
particularly in women during midlife, may be essential for
promoting a healthy brain aging trajectory.”


内臓脂肪は、成人の記憶能力や認知機能にとって、
敵であり、一方、エストラジールは、特に周閉経期の女性の場合、
味方である、ということができそうです。

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