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Vol.179. 医療系翻訳タイムズ(連想式医薬英単語4)
-迷ってしまうDEVELOP-

医薬文献中に頻繁に出てくる用語として、「発症する/発現する/生じる」は、
トップ10に挙げられる語彙でしょう。

「発症する/発現する/生じる」は、連想式医薬英単語の観点から見ても、
単語が芋づる式に以下のように出てきます。

occur(occurrence), develop (development), cause, induce,
onset、incidence, experience, express(expression), etc.

類似用語ではあるものの、使い方にそれぞれ特徴があることから、
例文を見ながら、説明を加えてみたいと思います。


まずは、受講生のかた達からも質問が多い
developについてです。

developは、自動詞(intransitive verb)であり、かつ
他動詞(transitive verb)でもあります。
ただ、「発症する/発現する/生じる」を意味する用語としては、
自動詞を使い、かつ「人」を主語にしない方が好ましい、
とする説があるようです。

例1. Pediatric nodal marginal zone lymphoma may develop
   in the adult population
  (小児節性辺縁帯リンパ腫は、成人集団で発症する可能性がある。)

例2. Autoimmune pancreatitis (AIP) can develop
   into chronic pancreatitis.
  (自己免疫性膵炎は慢性膵炎に発展する可能性がある。)

   そして、もし、「人間」を主語にするなら、以下の文章のように
   begin to feel/haveを使いましょう、という提案ですね。

   例:At age 41 years he began to feel pain in his left knee
     without any proximate cause.

また、developには「発展する」という意味合いがあることから、
なんらかの伏線があって、その後で、当該症状が発症する、
というニュアンスもあるようです。

例:Leukemia developed three years after exposure of radiation.
        (放射線暴露から3年後に白血病が発症した。)

ただ、この「発症する/発現する/生じる」のdevelopの場合、
「人間を主語にしない」ススメについて、しかし、
実際に学術論文にあたってみると、これは案外、破られているケースが
多いのです。

例示してみましょう。

例1.Most relapsing patients developed severe disability
   in a stepwise manner, and one-third died because of
   respiratory failure.
   (ほとんどの再発患者は段階的に重度の障害を発症し、
   3分の1は呼吸不全のために死亡した。)

例2.55% to 85% of patients do not clear virus, but
   develop chronic hepatitis C.
   ([急性ウイルス性肝炎の]患者の55%から85%は、
   ウイルスをクリアしないまま、慢性C型肝炎を発症する。)

例3. Ten percent of patients with breast cancer developed hypercalcemia.
   (乳がん患者の10%は高カルシウム血症を発症した。)

よって、develop(発症する/発現する/生じる)を使う英訳に際しては、
おおむね、自動詞を使い、人間を主語とした使い方は控えるとしても、
時に、目的語を伴う他動詞としての使い方も可、というくらいの
認識がベターかと思われます。

「発症する/発現する/生じる」を意味する用語として、
develop以上に頻繁に出てくるのがoccurです。
そして、occurはdevelopと違って、
自動詞のみ(intransitive verb)であるため、
主語に「人」が来ることは絶対にありません。
いくつか例示してみまましょう。

例1. "Takotsubo Cardiomyopathy Can Occur in Patients with Apathetic
   Hyperthyroidism." Thyroid, 24(2), pp. 400–401
   (たこつぼ心筋症は、無痛性甲状腺機能亢進症の患者に発生する
   可能性がある。)

例2. Hypercalcemia, pathological fractures and
   leukoerythroblastic anemia may occur.
   (高カルシウム血症、病的骨折、及び白赤芽球性貧血が
   生じる可能性がある。)


他に、「発症する/発現する/生じる」を意味する用語として記憶すべきは、
causeやinduceがあります。
ただ、これらは、「~を引き起こす」「~を誘発する」の意味合いが
強く、主語には「原因」を持ってきます。

例1. Tsukamura observed that M. avium complex can cause
   infection in the cavity of lung tuberculosis.
   (束村は、Mycobacterium avium complexが肺結核の遺残空洞への感染を
   引き起こす可能性があるということを観察した。)

例2. The most frequent cause was surgical trauma resulted from operations of the thorax
   and of the neck.
   (原因は、胸郭と頸部の手術に起因する外科的外傷にあった。)

例3. The readministration of RFP after 1-year cessation did not induce liver dysfunction.
   [休薬1年後のリファンピシン(rifampicin)の再投与は、肝障害を誘発
   しなかった。]

例4. “Early antibody therapy can induce long-lasting immunity
   to SHIV” Nature volume 543, pages559–563(2017)
   (初期の抗体療法は、SHIVに対する長期にわたる免疫を誘発する
   可能性がある。)

cf. SHIV-NM-3n which is attenuated live simian/human
   immunodeficiency virus
   (弱毒生サル/ヒト免疫不全ウイルスであるSHIV-NM-3n)
   [cited from: 特許庁]

以上のように、「発症する/発現する/生じる」を表現する用語は、
develop, occur, begin to feel/have, cause, induceなどが
代表的なものですが、しかし、それ以外にも記憶すべき用語はあるわけで、
それらは、まとめて、以下に記載しておきたく存じます。

① onset:
  early-onset Alzheimer disease(早期発症型アルツハイマー病)
② incidence:
  incidence of adverse drug reactions (薬物有害反応/副作用の発現)
③ experience:
  The patient experienced severe pain. (患者に重度の痛みが生じた)
④ express:
  ・method for detecting gene expression (遺伝子発現を検出する方法)
  ・recombinant virus expressing immunostimulatory molecule
     (免疫刺激分子を発現する組換えウイルス)

Note: express, expressionは、遺伝子関連文献の「発現」に
    使われます。

ということで、今回の179号「迷ってしまうDEVELOP」、
お愉しみ頂けましたでしょうか。

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