医薬医療系翻訳通信講座を行っているメディファーマランゲージはメールマガジンを発行しています

Vol.181. 医療系翻訳タイムズ(連想式医薬英単語6)
-主役級とも言える英語動詞再考-

この3-4ヵ月間、コロナ禍で大揺れする日常の中で、
心身の免疫力増強についての情報が、改めて気になる昨今ですが、
健康に良いと目されているココナッツ油についての海外論文が
目に止まりました。

つまり、ココナッツ油を摂取すると、非熱帯植物油の摂取と比して、高密度リポ蛋白
(HDL)コレステロール値が上昇するものの、低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール値も
上昇し、炎症や空腹時血糖、肥満の指標への影響に差がないことが示された、
という記事です。(Circulation. 2020;141:803-814)

それで、連想式医薬英単語のAssociation Englishとしては、
「コレステロール値が上昇する」とか「心血管リスクを上昇させる」などから、
「上昇あるいは増加する」に該当する英語について、今回、取り上げてみることと
致しました。

増加する/上昇するに該当する英語には以下のようなものがあります。

increase(vi, vt), escalate(vi, vt), elevate(vt), raise (vt). rise (vi), etc.
NOTE: vi[verb intransitive(自動詞)], vt[verb transitive(他動詞)]

1.最初に、最も使用頻度が高いincreaseから始めます。

increaseは、数・用量・濃度・体温・血圧・速度・割合すべてにわたって
使われる動詞です。
そして、自動詞であり、他動詞でもあるので、
能動態でも受動態でも、いずれでも使うことができます。

まず、目的語を付帯する能動態について。

例1-1. Increased levels of triglycerides, BMI and blood pressure
          and low physical activity increase the risk of diabetes in Swedish women.
          (トリグリセリド、BMI、血圧の上昇と身体活動の低下は、
          スウェーデンの女性の糖尿病のリスクを高める。)
          [Wiley Online Library, First published:19 May 2004, Citations: 59]

例1-2.The effectiveness of interventions to increase physical activity.
          (身体活動を増大させるための介入の効果)
          [American Journal of Preventive Medicine,
          Volume 22, Issue 4, Supplement 1, May 2002]

上記、2つの能動態の文章は、自然に増加するというニュアンスがあるのですが、
spontaneously(自然発生的に)という用語は使わないのが一般的です。

他方、以下のように、受動態を使う場合は、外的要因により増える、
という意味合いとなります。

例1-3.Inflammatory cytokine concentrations are acutely increased
          by hyperglycemia in humans.
          (炎症性サイトカイン濃度は、ヒトの高血糖症によって急激に上昇する。)
          [Circulation. 2002;106:2067–2072]


加えて、自動詞(vi)としてのincreaseの例文です。

例1-4.HMGB1(High Mobility Group Box 1) gradually increased
          in the alveolar fluid after the onset of acute exacerbation,
          in positive correlation with monocytes chemotactic protein-1 (MCP-1),
          a potent fibrogenic mediator.
          (HMGB1は、急性増悪の発症後、強力な線維化メディエーターである
          単球走化性タンパク質-1(MCP-1)との正の相関で、肺胞液中で徐々に増加した。)
          [Research Article | Open Access, Volume 2011 |Article ID 916486 | 9 pages]

加えて、increaseは名詞としても頻繁に使われます。

例1-5.Rate of temperature increase in human muscle during 1 MHz and 3 MHz
          continuous ultrasound.
          (1 MHzおよび3 MHz連続超音波中の人間の筋肉の温度上昇率)
          [Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy
          Published Online:October 1, 1995Volume22Issue4Pages142-150]

例1-6.Dose-related increase in mortality in patients with coronary heart disease.
           (冠状動脈性心臓病患者における、薬剤用量関連死亡率が上昇。)
           [1 Sep 1995, Circulation. 1995;92:1326–1331]

例1-7. Gradual increase of high mobility group protein B1 in the lungs
          after the onset of acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis.
          (特発性肺線維症の急性増悪の発症後の肺における高移動度群タンパク質B1の漸増。)
          [Research Article | Open Access, Volume 2011 |Article ID 916486 | 9 pages]

2.次いで、escalateですが、漸増/段階的の意味合いで使われます。

まず、他動詞から。

例2-1. Fibromyalgia, chronic fatigue, and other iatrogenic diagnostic algorithms.
          Do some (diagnostic)labels escalate illness in vulnerable patients?
          (線維筋痛症、慢性疲労、および他の医原性診断アルゴリズム。
          一部の(診断)ラベルは、脆弱な患者の病気を増大させるか?)
          [Pages 161-177 | Published online: 30 Jun 2015]

例2-2.Factors that influence rheumatologists' decisions to escalate care
          in rheumatoid arthritis.
          (リウマチ専門医の関節リウマチのケアを、段階的に拡大する決定に影響を与える要因。)
          [First published:28 May 2010, Citations: 38]

例2-3.Continuous infusion of escalated doses of amphotericin B deoxycholate:
          An open-label observational study.
          (アンフォテリシンBデオキシコール酸の漸増用量の持続注入:
          非盲検観察試験)
          [Clinical Infectious Diseases, Volume 36, Issue 8, 15 April 2003]

          escalateは、“escalated dose”と過去分詞を形容詞的に使っています。
          この過去分詞の形容詞的用法は、医薬文献でも頻繁に見られる表現です。
          例えば、dose-escalated Drug B(薬剤Bの用量漸増)etc.
          医薬文献でも頻出する表現なので、記憶に留めておきたいところです。

3.続いて、elevateですが、他動詞のみで、目的語を付帯します。

例3-1. Red wine and beer elevate blood pressure in normotensive men.
          (赤ワインとビールは、正常血圧男性の血圧を上昇させる。)
          [Hypertension. 2005;45:874–879, Originally published18 Apr 2005,]

例3-2. Use of non-steroidal anti-inflammatory drugs that elevate
          cardiovascular risk.
          (心血管リスクを高める非ステロイド系抗炎症剤の使用。)
          [Published: February 12, 2013, Journal Pmed.1001388]


4.4番目のraise も他動詞のみで、目的語を付帯します。

例4-1. Increases in body mass index, even within non‐obese levels,
          raise the risk for type 2 diabetes mellitus:
          A follow‐up study in a Japanese population.
          (ボディマス指数の増加は、非肥満レベル内であっても、
          2型糖尿病のリスクを高める:日本人集団での追跡調査。)
          [First published:13 July 2005, Citations: 49]

例4-2. How does salt raise blood pressure?
          (塩はどのように血圧を上げるのか?)
          [Originally published1 Jan 1986, Hypertension. 1986;8:83–88]

例4-3. The safety of opioid analgesics in the elderly:
          New data raise new concerns.
          (高齢者におけるオピオイド鎮痛薬の安全性:新しいデータが新たな懸念を引き起こす。)
          [Arch Intern Med. 2010;170(22):1986-1988]

例4-4. To achieve the thermal effects of ultrasound, the tissue temperature
          must be raised from 1 to ≥4°C, depending on the desired outcome
          of the treatment.
          (超音波の熱効果を達成するには、治療の望ましい結果に応じて、組織の温度を
          1から≥4°Cに上げる必要があります。)
          [Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy
          Published Online:October 1, 1995Volume22Issue4Pages142-150]


5.五つ目のriseは自動詞のみなので、目的語は付帯しません。

例5-1. Body temperature continued to rise over 5 days.
          (体温は5日間以上、上がり続けた)

また、下記の例文は、riseを名詞形に使っています。

例5-2. Staphylococcus aureus is a formidable and resilient human pathogen,
          as evidenced by its inexorable rise over recent years.
          (黄色ブドウ球菌は、近年その容赦のない増加によって証明されているように、
          手ごわくて強靭な、ヒト病原体です。)
          [First published:07 July 2009, Citations: 37]


ということで、今回のトピック「増加する/上昇する」はいかがだったでしょうか。

ちなみに、今回の181号のトピックに関連のある弊社の講座ですが、
和文英訳講座であれば、すべて当てはまります。


ネオモニタン塾
            ↓
https://www.mplanguage.co.jp/neomoni/

CIOMSモニタン塾
    ↓
https://www.mplanguage.co.jp/cioms/


いずれも、医薬翻訳業界で、ほぼ恒久的に需要のある
英訳技術ですので、改めて、
受講を前向きに検討して頂くことを推奨します。


____________________________

◆ 養成講座各8コース、特徴を発揮しつつ、稼働中です。
   全コース、1テキストずつになっているので、
   まずはお試し受講から、が可能になっています。
   関心のあるトピックからどうぞ。
____________________________

1.初めて医薬翻訳に取り組むかたや文系出身者にとって、
 いまや、王道コースともなっている、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座ベーシックコース」(英文和訳)
 ⇒ https://www.mplanguage.co.jp/school/

2.原則、ベーシックコース修了者あるいは英語上級者は、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座ADVANCED COURSE」(英文和訳)
 ⇒ https://www.medipharm-english.com/

3.医薬翻訳とはどのようなものなのか、玄関を覗いてみたいかたは、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座パイロットコース」(英文和訳)
 ⇒ https://www.mplanguage.co.jp/pilot/

4.安全性(副作用)情報から医薬翻訳の一角に切り込みたい、文系出身者は、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座 市販後コース」(英文和訳)
 ⇒ https://www.mplanguage.co.jp/shihan/

5.医薬品開発サイトに即した和英翻訳者への挑戦を決意したかたは、
 「モニタン塾」(和文英訳)。
 現在、20課題が出揃っています。
 ⇒ https://www.mplanguage.co.jp/moni_jyuku/

6.医薬医療系論文あるいは治験総括報告書の和英を
 学習することを決心したかたは、
 「ネオモニタン塾」(和文英訳)。
  No.24まで、課題が出揃っています。
⇒ https://www.mplanguage.co.jp/neomoni/

7.需要が増大する一方の副作用情報の和文英訳。
  文系のかたの自己ブランディング可能分野
  でもあります。
  「CIOMSモニタン塾」(和文英訳)。
  No.20まで、課題が出揃っています。
 ⇒ https://www.mplanguage.co.jp/cioms/

8.斬新な医療英語の音声教材
  ⇒ https://www.mplanguage.co.jp/hearing/


___________________________________

◆ 医薬翻訳に必携の最新刊およびビデオライブラリ
___________________________________

1.「日本人が間違いやすい治験英単語2200」(日英・英日版)
   並びに「例文集」
   
https://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook_e3/

2.「治験総括報告書の英訳・和訳の傾向と対策」を
 購入した方からのコメント:

 「現在、ベーシック・テキスト4の課題と取り組んでおり、
 早速安全性の評価の部分を猛勉強中です。
 非常に参考になりとても助かっています。」

https://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook2/

3.「治験英語ハンドブック」を購入したかたからのコメント:

 「数日前に購入した『治験総括報告書の英訳・和訳の傾向と対策』が
 素晴らしい参考書であることを知り、本書の購入を決めた次第です。」

https://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook/

4.「臨床英単語アネックス」を購入した方からのコメント:

 「『治験総括報告書の英訳・和訳の傾向と対策』、および
 『治験英語ハンドブック』が非常に重宝しておりますので、
 こちらの『臨床英単語アネックス』も購入したいと思いました。
 よろしくお願いいたします。」

https://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook3/

5.ヘルスケア・ビデオ・ライブラリ
https://www.medipharm-english.com/mpl/f_video/

__________________________________

◆ マッチングサイトの活用のススメ
__________________________________

弊社マッチングサイトが、少しずつ、会員を増やしてきつつあります。

医薬医療系翻訳につき、腕に覚えがある、
あるいは、医薬医療系翻訳を学習中である。

その知識を生かすために、以下に登録する。

https://www.medipharm-english.com/match/

または、医薬医療系翻訳の得意なパートナーに出会うために
以下に登録する

https://www.medipharm-english.com/match/

一歩、踏み出すことによって、人生に変化が起きます。


【発行責任者】メディファーマランゲージ株式会社
              代表取締役 今 栄子
              住所:107-0052 東京都港区赤坂2-17-52, 5F
              TEL. 03-3589-2770(代)
              FAX. 03-5935-8442(代)
【会社概要】https://www.mplanguage.co.jp
【Facebook Page】https://www.facebook.com/medilanguage/?pnref=lhc
【発行システム】自社配信
*当ブログの著作権は発行者に帰属し、無断転載することを
   禁止します。
   各種コンテンツに転載する場合は、事前に弊社まで御連絡ください。
【ご意見、お問合せ】 info@mplanguage.co.jp
【登録、解除】https://www.mplanguage.co.jp

', '', ); $count = count($banner); $random = rand(0, $count - 1); echo $banner[$random]; ?>
ページトップへ