医薬医療系翻訳通信講座を行っているメディファーマランゲージはメールマガジンを発行しています

Vol.182. 医療系翻訳タイムズ(連想式医薬英単語7)
-上がれば下がる-

弊社養成講座では、英和翻訳講座のみならず、和英翻訳講座も3種類、設置していることもあって、
和文英訳講座の受講生のかたから、ときに、能動態と受動態の使い分けについて
質問を頂くことがあります。

これは、なかなか一筋縄ではいかない問題ではあるものの、
ある一定の法則というのは存在するので、そのあたりを今回は解説してみたいと思います。

例文としては、前回、増加する/上昇するに該当する用語を取り上げたので、
「上がれば下がる」の通説を踏襲して、今回は、下がる/低下する/減少する、を意味する英語を
引用しつつ、能動態と受動態の使い分けについてお話していきたいと思います。

下がる/低下する/減少する、を表現する英語としては、主だったところで、
decrease/reduce/diminish/lower/decline/fall/drop
などがあります。

decrease (vt, vi), reduce (vt, vi), diminish (vt, vi), lower (vt, vi), 
decline (vi, vt), fall (vi, vt), drop (vi, vt).
NOTE: vt[verb transitive(他動詞)], vi[verb intransitive(自動詞)] 

これらの用語は、いずれも、他動詞(vt)としても自動詞(vi)としても使えますが、
傾向として、圧倒的に自動詞として使う用語の場合、(vi)を先に表示しています。


1. まず、increaseの反対語として広く知られているdecreaseから。

decreaseは、increase同様、数・用量・濃度・体温・血圧・速度・割合
すべてにわたって使われる動詞です。
そして、やはり、increase同様、他動詞であり、自動詞でもあるので、
能動態でも受動態でも、いずれでも使うことができます。

能動態は、行為者を強調する文体で、目的語を帯同します。

例1-1. Drug A does not decrease mortality in Staphylococcus aureus bacteraemia 
          when added to the standard treatment: a prospective and randomized clinical 
          trial of 381 patients.

          (薬剤Aは、標準治療に追加しても黄色ブドウ球菌菌血症の死亡率を低下させない:
          381人の患者を対象とした前向き無作為化臨床試験)
          [Journal of Internal Medicine, Volume259, Issue2,  February 2006,  Pages 179-190]

典型的な能動態のこの文章は、「行為者」である「薬剤A」が重要で、強調されており、
目的語を帯同しています。

この文章を、
Mortality in Staphylococcus aureus bacteraemia is not decreased by DRUG A.
と、受動態で置き換えることは可能ですが、しかし、受動態にすると、
「(黄色ブドウ球菌菌血症の死亡率が)低下させられない」という行為の方が協調され、
薬剤Aは影が薄くなってしまいます。

薬剤Aは、省略することができるでしょうか?

受動態にする場合、このことを考える必要があります。

つまり、「行為者」Drug Aを省略しても、読み手が文意を理解できるのだったら、
受動態にしても問題ないでしょう。

しかし、上記の例文の場合、何が行為者なのか、読み手が知らないと正確に文意が
読み手に伝わらない恐れがあります。

何が行為者なのか、読み手がすでに知っているのか、あるいは、知る必要がないのか、
このあたりが、ある文章を受動態にするかどうか、の決め手になりそうです。

これに関連する例文をもうひとつ、挙げてみます。

例1-2. HR variability can be decreased with severe coronary artery disease, congestive 
          heart failure, aging and diabetic neuropathy. 
          (HR変動は、重度の冠動脈疾患、うっ血性心不全、加齢、糖尿病性ニューロパシーで
          減少する可能性がある。)
          [The American Journal of Cardiology, Volume 59, Issue 4, 1 February 1987, 
          Pages 256-262]

HR変動が減少させられるのは、重度の冠動脈疾患、うっ血性心不全、加齢、
糖尿病性ニューロパシーなどの「取られる行為」が重要で問題ということは明らかで、
そのため、受動態が適用されています。

「行為者」よりも「取られる行為」が重要となる受動態は、論文の「方法」のパートで
役立つ表現方法です。


次いで、decreaseを自動詞(vi)として使い、能動態で表現している例を挙げてみます。

例1-3. Mortality from coronary heart disease in the United States has decreased 
          substantially in recent decades. We conducted a study to determine 
          how much of this decrease could be explained by the use of medical 
          and surgical treatments as opposed to changes in cardiovascular risk factors.
          (米国の冠状動脈性心臓病による死亡率は、ここ数十年で大幅に減少している。
          心血管リスク因子の変化とは対照的に、この減少のどれだけが医学的および
          外科的治療の使用によって説明できるかを決定するための研究を実施した。)
          [N Engl J Med 2007; 356:2388-2398, DOI: 10.1056/NEJMsa053935]

decreaseが自動詞として使われている主な理由は、目的語を明示する必要がないからです。
上記の例文で焦点が当てられているのは、
① 減少している主体、② 減少している時期、③ 減少している事実、などで
目的語は不要なのです。

それと、もう1点の注目は、
decreaseが名詞としても使われている点です。
decreaseのみならず、「下がる/低下する/減少する」を表す英単語は、
ほとんどすべて、動詞のみならず、名詞としても頻繁に使われています。


2. 続いて、reduceですが、他動詞として使われ、目的語を帯同する能動態で表現されることが
圧倒的に多いです。

例2-1. Nonsteroidal antiinflammatory drugs reduce radiographic progression in patients 
          with ankylosing  spondylitis.
          (非ステロイド性抗炎症薬は強直性脊椎炎患者のX線撮影の進行を低下させる。)
          [Arthritis & Rheumatology, 52 巻、6 号, 2005年6月, ページ1756-1765]

いわゆる能動態の王道とも見做すべき英文で、
行為者である「非ステロイド性抗炎症薬」が重要であり、主語を強調する文体となっています。
この英文も、例1-1の英文同様、目的語を主語とする受動態にすることは不適切なのですが、
その理由は、例1-1で述べた通りです。

それでは、他動詞reduceの受動態の例も参照してみましょう。

例2-2. Effect of preoperative smoking intervention on postoperative complications. 
          (…) trial shows that postoperative complications can be substantially 
          reduced by smoking (…)
          The reduction in postoperative complications was most evident 
          for wound-related (…)
          [The Lancet, Volume 359, Issue 9301, 12 January 2002, Pages 114-117]

上記の受動態英文の場合、他動的要素つまりsmokingの存在が強くて大きいのです。
そのため、reduceは他動詞であっても、受動態で表現されています。

同様のニュアンスの例文をもうひとつばかり。

Both systolic and diastolic blood pressures were significantly reduced by the training. 
HDL cholesterol increased significantly and the atherosclerotic index (LDL/HDL)
decreased significantly. 
[信州医学雑誌 48(2), 89-96, 2000-04-10, 信州医学会]

上記のケースも他動的要素であるtrainingsの存在が強いということがわかります。
ちなみに、この例文のincrease, decreaseは自動詞です。
その理由については、例1-3の説明を参照されたい。

3. 次は、diminishです。

行為者が重要で、目的語を帯同する能動態の文章を例示してみます。

例3-1. Early resumption of oral intake does not diminish the duration of postoperative ileus 
          (経口摂取の早期再開は、術後イレウスの期間を減少させない。)
          [British Journal of Surgery, Volume 94, Number 5, 1 May 2007, pp. 555-561(7)]

この文例も、受動態で表現するのは不適切なケースです。


4. 4番目のlowerですが、他動詞かつ能動態の例を挙げます。

例4-1. By how much and how quickly does reduction in serum cholesterol 
          concentration lower risk of  ischaemic heart disease?
          (血清コレステロール濃度の低下はどのくらいの速さで虚血性心疾患のリスクを
          低下させるのか?)
          [BMJ 1994; 308 doi: (Published 05 February 1994) Cite this as: BMJ 1994;308:367]

ただし、lowerは、比較級の形容詞として使われることも多く、その方が読み手にとって、
馴染みがあるとも言えます。下記を参照されたい。

例4-2. Plasma concentrations of adiponectin in obese subjects were significantly lower than 
          those in non-obese subjects, although adiponectin is secreted only 
          from adipose tissue. 
          (アディポネクチンは脂肪組織からのみ分泌されるが、肥満被験者のアディポネクチンの
          血漿濃度は非肥満被験者の血漿濃度よりも有意に低かった。)
          [Elsevier, Volume 257, Issue 1, 2 April 1999, Pages 79-83]


5. 五つ目のdecline, 自動詞であり、他動詞なのですが、自動詞として使われることがほとんどです。
それと、名詞としても用いられることが多く、ほとんどの場合、前置詞inを帯同します。

例5-1. High-Dose B Vitamin Supplementation and Cognitive Decline in Alzheimer Disease.
          (アルツハイマー病における高用量ビタミンB補給と認知機能低下)
          [JAMA. 2008;300(15):1774-1783. doi:10.1001/jama.300.15.1774]

6. 加えて、fallです。

例6-1. Serum α2‐macroglobulin levels were (…) continued to fall significantly 
          from day 1 to day 3 
          in  the colloid control group (P<0·005) (…). 
          (血清α 2 -マクログロブリンレベルは、(…) コロイド対照群(P <0・005)で、
          1~3日目に有意に下落し続けた。)
          [BJS, Volume74, Issue10, October 1987, Pages 907-911]

fallは、ほとんどの場合、自動詞として使われ、目的語は明示しません。
従って、焦点があてられるのは、
① 減少している主体、② 減少している時期、③ 減少している事実、などで
目的語は不要です。

また、名詞としても使われます。

7. dropも「下がる/低下する/減少する」の意味合いで使われる場合、
fallと非常によく似た使われ方をします。
つまり、目的語を伴わない自動詞として、ということです。
そして、dropは、名詞として使われることも多いのですが、
その場合、drop-outが主流の印象を受けます。

例7-1. Subjects often drop out of longitudinal studies prematurely, yielding unbalanced 
          data with unequal numbers of measures for each subject.
          (被験者はしばしば縦断研究から時期尚早に脱落し、各被験者の測定数が等しくない
          不均衡なデータが生成される。)
          [Journal of the American Statistical Association,  Volume 90, 1995 - Issue 431]

お次いでに、dropの名詞形もご紹介します。

例7-2. Data collection on the nature of the drop-out process is advocated to guide 
          the choice of model. 
          (ドロップアウトプロセスの性質に関するデータ収集は、モデルの選択をガイドするために
          提唱されている。)
          [Journal of the American Statistical Association,  Volume 90, 1995 - Issue 431]

加えて、下記は、fallの名詞形と同様、前置詞inを帯同するケースです。

例7-3. A significant drop in viral load was observed.
          (ウイルス量の有意な低下が観察された。)
          [Journal of Hepatology, Volume 59, Issue 1, July 2013, Pages 81-88]

結論です。

下がる/低下する/減少するを英訳する場合、まず、decrease, reduce, diminishを
思い出しましょう。
ただ、decreaseは自然に(spontaneously)、reduceおよび diminishは、外的要因によって、
という若干のニュアンスの違いがある、ということは記憶しておくことをお勧めします。
また、decline, fall, dropは、自動詞として使われることが多く、
かつ、動詞よりもむしろ名詞として頻繁に使われる、ということも付言しておきたく存じます。。

ということで、今回のトピック「下がる/低下する/減少する」はいかがだったでしょうか。

ちなみに、今回の182号のトピックに関連のある弊社の講座ですが、
和文英訳講座であれば、すべて当てはまります。


ネオモニタン塾
            ↓
http://www.mplanguage.co.jp/neomoni/

CIOMSモニタン塾
    ↓
http://www.mplanguage.co.jp/cioms/


いずれも、医薬翻訳業界で、ほぼ恒久的に需要のある
英訳技術ですので、改めて、
受講を前向きに検討して頂くことを推奨します。


____________________________

◆ 養成講座各8コース、特徴を発揮しつつ、稼働中です。
   全コース、1テキストずつになっているので、
   まずはお試し受講から、が可能になっています。
   関心のあるトピックからどうぞ。
____________________________

1.初めて医薬翻訳に取り組むかたや文系出身者にとって、
 いまや、王道コースともなっている、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座ベーシックコース」(英文和訳)
 ⇒ http://www.mplanguage.co.jp/school/

2.原則、ベーシックコース修了者あるいは英語上級者は、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座ADVANCED COURSE」(英文和訳)
 ⇒ http://www.medipharm-english.com/

3.医薬翻訳とはどのようなものなのか、玄関を覗いてみたいかたは、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座パイロットコース」(英文和訳)
 ⇒ http://www.mplanguage.co.jp/pilot/

4.安全性(副作用)情報から医薬翻訳の一角に切り込みたい、文系出身者は、
 「医薬医療系翻訳者養成通信講座 市販後コース」(英文和訳)
 ⇒ http://www.mplanguage.co.jp/shihan/

5.医薬品開発サイトに即した和英翻訳者への挑戦を決意したかたは、
 「モニタン塾」(和文英訳)。
 現在、20課題が出揃っています。
 ⇒ http://www.mplanguage.co.jp/moni_jyuku/

6.医薬医療系論文あるいは治験総括報告書の和英を
 学習することを決心したかたは、
 「ネオモニタン塾」(和文英訳)。
  No.24まで、課題が出揃っています。
⇒ http://www.mplanguage.co.jp/neomoni/

7.需要が増大する一方の副作用情報の和文英訳。
  文系のかたの自己ブランディング可能分野
  でもあります。
  「CIOMSモニタン塾」(和文英訳)。
  No.20まで、課題が出揃っています。
 ⇒ http://www.mplanguage.co.jp/cioms/

8.斬新な医療英語の音声教材
  ⇒ http://www.mplanguage.co.jp/hearing/


___________________________________

◆ 医薬翻訳に必携の最新刊およびビデオライブラリ
___________________________________

1.「日本人が間違いやすい治験英単語2200」(日英・英日版)
   並びに「例文集」
   
http://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook_e3/

2.「治験総括報告書の英訳・和訳の傾向と対策」を
 購入した方からのコメント:

 「現在、ベーシック・テキスト4の課題と取り組んでおり、
 早速安全性の評価の部分を猛勉強中です。
 非常に参考になりとても助かっています。」

http://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook2/

3.「治験英語ハンドブック」を購入したかたからのコメント:

 「数日前に購入した『治験総括報告書の英訳・和訳の傾向と対策』が
 素晴らしい参考書であることを知り、本書の購入を決めた次第です。」

http://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook/

4.「臨床英単語アネックス」を購入した方からのコメント:

 「『治験総括報告書の英訳・和訳の傾向と対策』、および
 『治験英語ハンドブック』が非常に重宝しておりますので、
 こちらの『臨床英単語アネックス』も購入したいと思いました。
 よろしくお願いいたします。」

http://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook3/

5.ヘルスケア・ビデオ・ライブラリ
https://www.medipharm-english.com/mpl/f_video/

__________________________________

◆ マッチングサイトの活用のススメ
__________________________________

弊社マッチングサイトが、少しずつ、会員を増やしてきつつあります。

医薬医療系翻訳につき、腕に覚えがある、
あるいは、医薬医療系翻訳を学習中である。

その知識を生かすために、以下に登録する。

https://www.medipharm-english.com/match/

または、医薬医療系翻訳の得意なパートナーに出会うために
以下に登録する

https://www.medipharm-english.com/match/

一歩、踏み出すことによって、人生に変化が起きます。


【発行責任者】メディファーマランゲージ株式会社
              代表取締役 今 栄子
              住所:107-0052 東京都港区赤坂2-17-52, 5F
              TEL. 03-3589-2770(代)
              FAX. 03-5935-8442(代)
【会社概要】http://www.mplanguage.co.jp
【Facebook Page】https://www.facebook.com/medilanguage/?pnref=lhc
【発行システム】自社配信
*当ブログの著作権は発行者に帰属し、無断転載することを
   禁止します。
   各種コンテンツに転載する場合は、事前に弊社まで御連絡ください。
【ご意見、お問合せ】 info@mplanguage.co.jp
【登録、解除】http://www.mplanguage.co.jp

ページトップへ